【レビュー】「Bloodstained: Ritual of the Night」 メトロイドヴァニアの巨匠が贈る”悪魔”的な中毒性を秘めた完全新作

出典元:株式会社ArtPlay

五十嵐孝司。かつて、コナミを代表する大ヒット作となった「ときめきメモリアル」の開発に携わり、その後、同社の「悪魔城ドラキュラ」シリーズの中で、横スクロール型探索アクションの代名詞ともいえる「メトロイドヴァニア」の語源ともなった「キャッスルヴァニア」シリーズを生み出し、IGAという愛称でも親しまれる偉大なるゲームデザイナーだ。

そんな五十嵐氏だが、 2014年、新たな開発スタジオを開くためにコナミを退社。同年9月、株式会社ArtPlayの立ち上げに関わり、代表取締役プロデューサーに就任。その後、本作の開発に携わる。

2015年には、クラウドファインディングである「Kickstarter」にて出資者が募られた。その結果、数あるインディーゲームの中でも異例の累計500万ドル超が集まり、国内のみならず、海外にも絶大な支持を誇る事が浮き彫りとなった。そして、数年を経た2019年6月18日、海外にて、念願の本作「Bloodstained: Ritual of the Night」が発売に至る。

さて、前置きが長くなったのだが、探索濃度の高い横スクロールアクションRPGである本作の日本語パッケージ版がPS4、Switch向けに2019年10月24日に発売される。日本発売に向け、今一度本作の魅力について振り返っていきたい。

呪われた城を舞台とした、完全新作を印象付ける重厚で闇に満ちた世界観

舞台となるのは「呪われた城」。かつて著しい科学の進歩により地位を失いつつあった”錬金術ギルド”は、既得権益損失の恐怖により暴走する。ギルドは、悪魔の力と同調する結晶を移植した人間「シャードリンカー」を生贄に、悪魔召喚の儀式を試みる。儀式は成功するが、人々を巻き添えにしたその動乱は、教会の力によって鎮められた。
‥それから10年後、その儀式の跡地に再び悪魔が城とともに現れる‥

その儀式の直前に謎の眠りに落ち、儀式を免れたシャードリンカーの生き残りとなる一人の少女「ミリアム」が本作の主人公である

出典元:株式会社ArtPlay

ミリアムをはじめ、シャードリンカーのもう1人の生き残り「ジーベル」や、ジーベルの親友であり儀式に唯一反対した錬金術師「ヨハネス」など、五十嵐氏が長年温めてきたとされる丁寧なキャラ設定と、どこか悪魔城シリーズを彷彿とさせるような重厚で闇に満ちた世界観が3Dビジュアルで描かれている

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また、世界観を彩るBGMは、悪魔城ドラキュラシリーズ等の作曲で有名な山根ミチル氏と、ガンヴォルトシリーズやロックマンシリーズを手掛けた山田一法氏が制作しており、オーケストラ調で奏でられる、世界観に見事にマッチしたIGAファンなら感涙ものの完成度だ。

その世界観は時折り”ぶっ壊される”

先に述べた重厚な世界には様々な人物が登場する。特に強く印象に残ったのは、物語の拠点となる、とある場所に住まわっている「リンジー」と名乗るおばさんである。

このおばさんからは、「夫を殺した魔物を退治して欲しい‥」とか「従兄弟を殺した魔物を退治して欲しい‥」とか、心痛む理由で生まれた討伐系クエストを受けることができるのだが、必ず受注した際に「ぶっ殺しておくれ!」と、なんとも清々しいセリフが浴びせられる。毎回である。

出典元:株式会社ArtPlay

他にも、殺人鬼が店主を務める近代の賜物である「美容院」なるものが存在し、髪型や服装の色までもプレイヤー好みに変更できたり、高級そうな絵画が飾られた部屋で写真撮影をサービスいただける場所が存在したりと、重厚なだけでなく、ときおりユーモアを感じられる場所が構えられているのも魅力の一つといえよう。

無数の組み合わせと見た目の変化が楽しめる装備・シャード(魔法)システム

主人公となる「ミリアム」が扱える武器種は様々で、剣や鞭、銃や武足といった10種類のなかから選択可能だ。武器はそれぞれモーションや特性が全く異なるため、敵によって切り替えて戦っていくことも戦略の一つだ。防具やアクセサリ類は変更する事によってグラフィックも変化するため、性能アップだけでなく、見た目にも楽しめるものになっている。

出典元:株式会社ArtPlay

シャードといわれる魔法のようなスキルは、敵を倒した際に一定の確率で手に入れる事が可能。シャードによって、強力な攻撃方法となるもの、ステータスをアップさせるもの、敵の攻撃を防ぐものなど、性能も見た目も異なる個性的なシャードが多数用意されており、同時に6種類まで装備する事ができる。

このような武器、防具、シャードの組み合わせは無数に存在し、それぞれをショートカットに登録して瞬時に呼び出す事もできるので、プレイヤーの戦闘スタイルに適した組み合わせを楽しむことができる

探索欲と世界観を深める図鑑システム

メニュー画面からは、「悪魔図鑑」と称されるライブラリを見ることができ、敵ごとの出現エリアやステータス、討伐数やドロップアイテムなどを確認できるほか、ユニークな説明がされたキャラ紹介も見ることができる。

出典元:株式会社ArtPlay

ドロップアイテムの項目を埋めたり、その敵の知られざる背景が垣間見えたりと、探索欲と世界観を深めるシステムになっている。

底の深いハクスラ要素がもたらす”悪魔”的な中毒性

本作のゲーム性の肝となるのは、底の深いハクスラ要素

ショップで売買されていたり、敵がドロップする武器の総数は100を超え、シャードにも成長要素が存在し、同じ種類のシャードを入手したり、錬金術を駆使する事でランクやグレードが上がり、性能や見た目もアップグレードされていく。もちろん、強力な武器やシャードはドロップ率が極めて低い、いわゆる「レアドロップ」の扱いになっているのだが、それゆえに入手できた時の達成感はいうまでもない。

出典元:株式会社ArtPlay

また、各武器種ごとには格闘ゲームのようなコマンドを入力することで発動できる必殺技も用意されており、通常攻撃をキャンセルして発動することができるので、独自のコンボを組み立てることも可能だ。この必殺技にも熟練度が設定されており、繰り返し繰り出す事でより強力なダメージソースとなっていく。必殺技については、使用しなくても特段ゲーム進行に影響はないので、アクションが苦手なプレイヤーはあえて使用する必要はないだろう。

こういった強力な武器やシャードを見つけ、強化していく過程が本作の醍醐味であり、時間を溶かしていく“悪魔”的な中毒性を生み出している。

『世界よ、これがメトロイドヴァニアだ』

本作を進めていくにあたり、プレイヤーは様々な壁に遭遇する。例えば、飛び移れない地形だったり、例えば、幅が狭く通り抜けられない先に宝箱が置かれていたりするのだ。色々と試行錯誤してみるのだが、幾らやっても進まない‥しょうがなく、プレイヤーは尾を引かれながらもその地を後にする。

‥やがて、強敵を倒すと新たなスキルを入手する。スキル説明を見た瞬間にプレイヤーはひらめく。「このスキルはあそこを通り抜けるための手段だ!」と。

本作は様々な敵とのアクション性とリプレイ性の高い道中の戦闘やそれぞれが特徴を持ち歯ごたえのあるボス戦、プレイヤーにあえて気づかせる絶妙で飽きさせないギミック配置、広大なマップを行き来する事でやがて進行不可だったエリア間の点と点が繋がっていく喜びが散りばめられている。これこそが”メトロイドヴァニア”を世に知らしめた巨匠の芸術といえるだろう。

マップを含む、少し淡白なユーザーインターフェースは賛否有りか

探索の要となるマップや、装備変更やステータス画面などの表示について、見づらいということは決してないのだが、少しオーソドックスで淡白な印象を受けた。

昨今では、そういったユーザーインターフェースへのこだわりも楽しめるゲームが多くなっているため、本作でも何かもう一工夫が欲しかったところだ。

様々なユーザー層に向けられた、キャッスルヴァニアの精神的続編

このように、本作はメトロイドヴァニアファンが求める”お約束“を決して崩すことなく、探索アクションの面白さを再構築してギュッと詰め込まれた、多くのファンが長年持ち続けた期待に十二分に応えてくれる作品だった。

出典元:株式会社ArtPlay

本作は完全新作なのだが、ところどころに「IGAヴァニア」ファンならニヤリとする展開もあるので、ぜひ隅々まで探索して貰いたい。

コア層なら無条件に、まだこの手のジャンルをプレイした事のない方もこれを機に触れてみてはいかがだろうか。

なお、より世界観を深めるものとして、本作の外伝となるレトロ調な8bitスタイルの探索アクション作品「Bloodstained: Curse of the Moon」もリリースされている。
プレイ必須ではないが、こちらも外伝ながら完成度の高い作品となっているので、興味のある方はぜひ。